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硝子体黄斑牽引症候群とは

 網膜の中心であり、物を見るために非常に大切な黄斑部には様々な疾患が起こります。高齢者の視覚障害に大きな割合を占める黄斑変性症、糖尿病や網膜静脈閉塞などにより水が溜まってしまう黄斑浮腫、黄斑に穴が開いてしまう黄斑円孔、黄斑の上に膜が張る黄斑前膜、そして今回ご紹介する硝子体黄斑牽引症候群があります。
 黄斑変性症と糖尿病や網膜静脈閉塞などに伴う黄斑浮腫は網膜由来の疾患と考えられます。一方、黄斑円孔、黄斑前膜、硝子体黄斑牽引症候群は硝子体が主因となって生じる疾患と考えられており、まとめて網膜硝子体界面症候群と分類されています。
 眼球の内部は硝子体というゲル状の組織で満たされています。ただ、黄斑部の前方には後部硝子体皮質前ポケットと呼ばれる液化腔があり、そのポケットの後壁はコラーゲンを多く含む硝子体皮質が薄い膜となって黄斑部に接着しています。この薄い硝子体皮質膜が収縮し、牽引することによって網膜硝子体界面症候群が生じると考えられています。
 硝子体は加齢によりゲルが徐々に液化し、高齢になると中の水が抜けて、虚脱収縮し網膜から剥離します。これを「後部硝子体剥離」と呼び、中高年で生じる飛蚊症の主な原因となります。その際、先ほどの硝子体皮質と黄斑部網膜の接着が強いとその部分が剥がれずに残り、収縮した硝子体組織が網膜を牽引することで硝子体黄斑牽引症候群が引き起こされます。
 硝子体黄斑牽引症候群の主症状は変視症(ものがゆがんで見える)で、進行すると視力低下を伴います。途中で硝子体皮質と黄斑部網膜の接着が外れれば自然治癒することもありますが、牽引が進み黄斑浮腫などを生じた場合は手術による治療を検討することになります。
【図1A】
【図1B】

 図1Aは後部硝子体剥離が進行中で、硝子体皮質と黄斑部網膜の接着部分が残って少し牽引されているOCT画像です。しばらく経過観察をしていたら接着が外れて牽引も解消されました(図1B)。
【図2A】
【図2B】
【図2C】

 図2Aは接着が強く、黄斑部網膜に浮腫が生じています。典型的な硝子体黄斑牽引症候群と言えます。視力がまだ保たれていたのでしばらく経過観察をしましたが、さらに牽引が増強し浮腫も増したため(図2B)、網膜専門医にお願いして手術をしていただきました。術後網膜の牽引は解消され、浮腫も減少しましたが網膜はまだ少し腫れています(図2C)。手術をしても回復まで半年程度は必要で、網膜が完全に元の状態まで戻らない場合もあります。
【図3A】
【図3B】
【図3C】

 図3は硝子体黄斑牽引症候群が自然治癒した例です。図3Aでは牽引が強く図2Aと同様に黄斑部浮腫が生じています。手術のご希望がなく経過観察を2年近く続けたところ、癒着が外れかけてきました(図3B)。さらに半年後には完全に癒着は外れ、黄斑部浮腫も治癒しました(図3C)。
参考文献
岸 章治:硝子体黄斑界面疾患の発症機序. The KITAKANTO Medical Journal.67:109-119,2017.
2018年11月1日掲載 
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