図1-Aは60歳代のかたの眼底写真で、写真上では黄斑のやや左寄りにわずかに白斑が生じています。そのOCT所見が図1-Bで、中央やや左寄りに網膜色素上皮の盛り上がりとそれを突き破っている新生血管板が白く反射して見えます。このかたは矯正視力が1.2ありますが、少しゆがみも自覚されており、注意深い観察が必要な状態です。 |
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【図2-A】 |
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【図2-B】 |
図2-Aは70歳代のかたの眼底写真です。現在矯正視力は0.3で、加齢黄斑変性としてはかなり進行している状態です。写真上では黄斑のやや左よりに赤黒い網膜下出血が確認され、その上方には赤褐色の新生血管板があります。また左下方には新生血管からの滲出物が蓄積した白斑が確認されます。図2-BはそのOCT所見です。中央部分の網膜と網膜色素上皮の間に黒い隙間ができています。これは新生血管から漏出した血漿成分が貯留して網膜が剥がれた状態になっている所見です。その左側には盛り上がった網膜とその下の白色病変がありますが、これは新生血管板と出血が混在しているものと思われます。 |
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前回加齢黄斑変性について書かせていただきました2008年の時点では、光線力学療法(PDT)が治療法の第一選択でしたが、現在の第一選択は抗血管内皮増殖因子薬(抗VEGF薬)のひとつである「ルセンティス(Ranibizumab)」の硝子体内投与に移ってきています。日本におけるルセンティスの臨床試験では、視力が改善した患者の割合は、投与6ヵ月後で24.4%、投与12ヵ月後で31.7%と報告されています。現時点で加齢黄斑変性の治療法で視力改善効果が認められているのは「ルセンティス」のみです。ただ、「ルセンティス」を投与することによって一過性脳虚血発作、脳梗塞の既往がある場合にはそれらが再発しやすくなる可能性があることと、硝子体内注射に伴う眼内炎などの副作用には十分注意をする必要があります。
最新の話題として、NHKでも取り上げられました「網膜色素上皮移植」による加齢黄斑変性治療のヒトでの臨床研究が2013年から始まるそうです。これは、山中伸弥教授が開発したiPS細胞から網膜色素上皮細胞を作って加齢黄斑変性症患者さんの網膜下に移植する治療法で、理化学研究所の高橋政代先生のチームが挑戦されるそうです。この治療法が成功すれば「ルセンティス」では効果のない患者さんや再発してしまう患者さんに大変な朗報になることと思います。 |
2012年10月1日掲載 |
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