1. 糖尿病と目の関係 |
糖尿病とは血液の中のブドウ糖(血糖)が高くなる病気です。体の中でインスリンという血糖を下げる働きのあるホルモンの分泌が不足している場合と、インスリン自体は分泌されているのに効果が発揮されにくい体質(肥満など)になっている場合、またはその両方の場合があります。
血糖が高くなると血液の粘調度が高まり、血液が水あめのようにドロドロになります。糖尿病があると動脈硬化も進行しやすく、ドロドロの血液は細い血管(毛細血管)の中をうまく流れることができずに、血管が詰まってしまいます。
特に細い血管の多い、目の網膜、腎臓、手足の末梢神経では影響を受けやすく、糖尿病の3大合併症と呼ばれる「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」を引き起こします。
糖尿病は網膜症のほかにも、白内障、虹彩炎、外眼筋麻痺、緑内障などの目の障害を引き起こします。 |
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2. 糖尿病網膜症とは |
糖尿病網膜症は日本人の中途失明の第一の原因となっています。
網膜の毛細血管が閉塞して網膜に血液がいきわたらなくなり、網膜が酸素不足となって、出血や血管異常をきたします。
網膜症は病期により大きく3段階に分けられます。 |
(1)単純網膜症 |
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網膜症の初期の段階で、網膜に小さな出血や白班がみられます。
自覚症状はほとんどありません。 |
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【単純網膜症】網膜の中心近くに小さな白斑と出血があります。 |
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(2)増殖前網膜症 |
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網膜症の中期の段階で、網膜に大きな出血や白班がみられます。また、網膜静脈が怒張や蛇行をしたり、毛細血管が閉塞したり、といった血管の異常がみられます。
自覚症状はほとんどありません。 |
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【増殖前網膜症】 |
網膜にやや大き目の白斑と出血が散在しています。
網膜の酸素欠乏が進んでいることがわかります。 |
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(3)増殖網膜症 |
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網膜の酸欠が重度となり、それを補うために新生血管という非常にもろい血管が形成されます。新生血管は破綻しやすいので、網膜出血や硝子体出血を引き起こします。出血を繰り返すと硝子体に増殖膜(ゴテゴテした新生血管を含む癒着)が生じて網膜はく離に至ります。
視力が低下します。大きな出血をすると突然見えなくなることもあります。 |
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【増殖網膜症】 |
白く見えるところが増殖組織です。下方に見える赤褐色の部分は目の中の出血(硝子体出血)です。
こうなってしまうと治療は非常に困難です。 |
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