初めて見る異常でしたので、そのときはお答えできなかったのですが、調べてみると孤立性脈絡膜陥凹(Focal choroidal excavation:FCE)という疾患であることが分かりました。
日本の眼科2015年3月号の若林先生の解説(*)によると、FCEは2006年に初めて報告された疾患で、黄斑部における局所的な脈絡膜の陥凹であり、アジアからの報告が多く、年齢は45〜55歳、-3〜-5D程度の近視眼に多い傾向がある。8〜24%で両眼に存在し、片眼に複数存在する場合もある。また、加齢性黄斑変性症や中心性網脈絡膜症に合併することも少なくない。またFCEには視細胞先端と網膜色素上皮層の間が分離しているタイプと分離していないタイプがあり、分離しているタイプでは物が歪んで見えたりかすんで見えたりする場合が多いということでした。現在のところFCEの原因は不明であり、その後の経過もはっきり分かっていないようです。 |
この男性の場合、視細胞先端が分離していないタイプであったため、自覚症状が全く無かったものと思われます。開業していると新しい疾患に出会うことは少ないのですが、今回改めて眼科診療の進歩を実感するとともに、日々研鑽して新しい知識を得ていく必要があることを再認識させていただきました。 |
* 若林美宏「Focal choroidal excavation とは」 日本の眼科:86(3)304-305,2015 |
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2015年9月1日掲載 |
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