家族性滲出性硝子体網膜症(以下FEVR)とCoats(コーツ)病はどちらも小児の網膜周辺部に滲出性病変を起こす疾患として重要です。 |
FEVRは遺伝性の網膜疾患であり、両眼の網膜血管の形成異常が様々な病態と引き起こします。遺伝形式は様々なものがありますが、常染色体優性遺伝のことが多いとされています。軽症の場合、血管走行異常は周辺部のみのことも多く、網膜の中心にあたる黄斑部に異常が及ばなければ、視力の低下もなく無症状のまま経過することもあります。重症例では異常血管からの滲出性変化に伴い増殖性硝子体網膜症となり、網膜剥離や白色瞳孔を生じる場合もあります。治療は網膜周辺部に無血管領域があったり、滲出性変化が生じていればレーザー光凝固の適応となり、網膜剥離が生じている場合には硝子体手術などの適応となります。 |
Coats病は片眼性で網膜に滲出性変化を生じる疾患で、多くは2〜10歳の男児に発症します。周辺部網膜に血管拡張、網膜出血、新生血管を認め、進行すると網膜剥離となり失明する場合もあります。病因は不明で、治療はFEVRと同様に網膜剥離が生じていなければレーザー治療、網膜剥離の場合は硝子体手術などの適応となります。 |
今回お示しするのは、6歳の男児で学校検診で左眼の軽い視力低下を指摘され、周辺部網膜に滲出性病変があったため、他院の先生からご紹介いただいたかたです。左眼黄斑が耳側に牽引されており(図1)、耳側網膜に血管拡張を伴う滲出性病変を認めました(図2)。右眼には明らかな異常を確認できなかったため、Coats病と判断しました。しかし、その後受診していただいた大学病院での精密検査の結果、右眼網膜周辺部にも血管走行の異常があり、家族歴もあったためFEVRの確定診断となりました。小児眼底病変の診断の難しさを改めて思い知ることとなりました。 |
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