現在、NHKで「人間ってナンだ?超AI入門シーズン2」が放映中で、第8回のテーマは「診療する」でした。そのなかで、近年ベイジアンネットワークを用いた医療用AIが開発されてきており、内科的には医師を補助する問診AIが十分役に立つレベルになっていること、言葉の持つ微妙なニュアンスの違いや言外の情報を理解するのがまだ難しいことなどが紹介されていました。 |
眼科の分野では、2018年にアメリカ食品医薬品局(FDA)が特殊な眼底カメラを用いて糖尿病網膜症を診断するAIシステムを認可しました。このシステムにより、眼科専門医にアクセスできない患者さんの眼底チェックが可能になり、失明のリスクを減らすことができると期待されています。また、我が国でも加齢性黄斑変性や黄斑円孔などの網膜疾患を中心に診断システムの開発が進んでいるようです。
また、2014年発表されたグーグルコンタクトレンズでは、コンタクトレンズにチップが埋め込まれ、涙液中のグルコースを測定して糖尿病コントロールに役立てたり、見たいところにピントを合わせて老視や遠視を補助することができるとされています。 |
眼科は目を見て診断するのが中心となりますので、画像解析を得意とするAIとの親和性は高いと思います。ただ、現状では条件のいい場合の画像データは取得しやすいのですが、白内障や角膜混濁などの場合は画像データの取得が難しく、乳幼児などではそもそも検査をすること自体が大変です。私たち眼科医は試行錯誤しながら少しでも条件のいい場所を探して診察したり、乳幼児の場合は一瞬の隙を見つけて診察したりします。そのため、オールラウンドの眼科診断AIが登場するのはまだまだ先のことになると思います。 |
ただ、近い将来にはスマートコンタクトレンズにより、眼圧を継続的に測定したり、点眼がきちんとできているか確認したりすることは可能となると思います。個人的には見たいところにピントが合わせられる老視用コンタクトレンズが実用化されることが一番待ち遠しいです。
今後ますます身近となっていくAIをうまく活用して、みなさんがより豊かな人生を過ごせるようになることを期待しています。 |
2019年4月1日掲載 |
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